電話が苦手でも引越しは頼める ── 電話なしで完結させる手順
562人を対象にした調査では、電話に苦手意識を感じている人は全体で57.8%、20〜30代に限れば72.7%でした。多数派です。
それでも引越しのときだけは、多くの人が電話を避けられずにいます。理由ははっきりしていて、一括見積もりサイトに一度入力すると、その情報が同時に複数社へ渡る仕組みだからです。構造が分かれば、避け方も分かります。この記事は、依頼から当日までを電話なしで進めるための具体的な手順です。電話が苦手なことを直す話は一切しません。
1. 電話が苦手なのは、甘えでも性格の問題でもない
20〜30代の72.7%が苦手意識を持っている
電話業務の実態を調べた調査(2023年8月、562人)では、電話に苦手意識を「とても感じる」「やや感じる」と答えた人が全体の57.8%、20〜30代では72.7%にのぼりました。
別の調査でも傾向は同じです。2024年3月に社員215人に行った調査では、電話とメッセージのどちらで連絡を取りたいかという問いに約90%がメッセージと回答。電話に苦手意識があると答えたのは20代で58%、30代で49%でした。一方、60代で「苦手意識がある」と答えた人は0%です。
世代によってこれだけ差が出るものは、個人の性格の問題ではありません。連絡手段の標準が入れ替わった結果として起きている、環境の話です。
苦手な理由の中に、引越しで実害になるものがある
同じ調査で挙がった「電話が苦手な理由」の上位は、次のとおりでした。
- 相手の都合を考えてしまう
- よく考えてから話すことができない
- 会話を終えるタイミングが難しい
- 記録として残らない
最後の「記録として残らない」は、引越しでは実害に直結します。電話で「段ボール10箱くらいですね」「はい」とやりとりした内容は、どこにも残りません。当日に金額が変わったとき、何をどう伝えたのかを双方が確認する手段がない。テキストで進めることは、苦手意識への対処であると同時に、契約上の自衛でもあります。
2. なぜ引越しの見積もりだけ、あんなに電話が鳴るのか
1回の入力が、同時に複数社へ渡っている
一括見積もりサイトは、入力された氏名・住所・電話番号・引越し予定日などを、提携する複数の引越し会社へまとめて送る仕組みです。あなたは1回申し込んだつもりでも、業者側から見れば「今まさに検討中の見込み客の連絡先」が同時に何社にも配られている状態になります。
だから、送信ボタンを押した直後から電話が鳴り始めます。これは特定のサイトが乱暴だという話ではなく、複数社の見積もりを一度に集めるという仕組みが構造的にそうなるという話です。
業者側にも、急いで電話する理由がある
業者が急ぐのにも理由があります。見積もりを取った社数を聞いた調査(n=100)では、1社が20%、2社が26%、3社が28%、4社が14%、5社が10%、6社以上が2%で、平均すると約2.7社。ここから計算すると、見積もりを出した1件が受注になる確率は3件に1件程度です(※当社試算)。
3件に2件が失注する前提で、しかも先に接触して条件を提示できた会社のほうが有利になりやすい。だから各社が一斉に、できるだけ早く電話をかけます。営業担当が意地悪をしているのではなく、そうしないと取れない構造の中にいます。
加えて、引越し需要は3月に集中します。3月の引越し件数は他の月の約2倍で、国土交通省が時期の分散を呼びかけているほどです。この時期は各社とも枠の埋まり方が速く、連絡のペースはさらに上がります。
検討するのは夜、電話が来るのは翌朝
もうひとつ、時間帯のズレがあります。引越しを調べるのは仕事や学校が終わったあとの夜です。ところが業者の営業時間は日中なので、夜に申し込んだ結果、翌朝の勤務中に何件も着信が入ることになります。折り返せないまま着信が積み上がっていくのは、電話が苦手な人にとって最悪の状況です。
ここまでが構造です。電話が鳴り止まないのは、あなたの申し込み方が悪かったからではありません。ただし、鳴らさない方法はあります。
3. 電話なしで完結させる手順
ステップ1 依頼先を自分で2〜3社選ぶ
最初の分岐がここです。一括見積もりサイトに投げるのをやめ、依頼する会社を自分で選んでから、各社に個別に連絡します。手間は増えますが、増えるのは「サイトを2〜3個開く」程度です。それだけで、連絡が来る社数が自分の選んだ数に固定されます。
一括見積もりサイトを使う場合でも、対策はあります。サイトによっては電話番号の入力が任意になっているものがあり、その場合は電話番号を入れなければメール中心のやりとりになります。また、申し込み時に営業電話を受け取らない設定ができるサイトや、見積もり依頼先の業者を自分で選べるサイトもあります。使う前に、その3点を確認してください。
ステップ2 公式サイトのフォームから、備考欄を使って依頼する
選んだ会社の公式サイトにある問い合わせフォームから直接依頼します。このとき、備考欄・要望欄に連絡手段の指定を必ず書いてください。これが最も効きます。
お世話になります。引越しの見積もりをお願いいたします。
恐れ入りますが、ご連絡はメールでお願いいたします。日中は電話に出られないため、お電話をいただいてもご対応できません。
荷物の写真が必要でしたら送付いたします。訪問やオンラインでの見積もりが必要な場合も、まずはメールでご相談させてください。
ポイントは「出られない」と書くことです。「苦手です」と書く必要はありませんし、書きたくないでしょう。「日中は出られない」は事実として通りますし、業者側も無駄な架電を避けたいので、素直に従ってくれることが多くあります。
ステップ3 電話番号欄の扱い
フォームで電話番号が必須になっている場合は、素直に入力してください。虚偽の番号を入れると、当日の連絡がつかず、あなたが困ります。入力したうえで、備考欄に前述の1文を添えるのが正解です。
引越し当日は、トラックの到着時刻の連絡など、電話でしか成立しない場面が残ります。番号は正しく渡したうえで、「使う場面を限定してもらう」のが現実的な落としどころです。
ステップ4 LINEやメールに寄せる
LINE公式アカウントで見積もりを受け付けている会社が増えています。LINEは新しくアプリを入れる必要がなく、写真もそのまま送れて、やりとりが時系列で残ります。電話が苦手な人にとっては、フォームより相性がいい場合があります。会社を選ぶ段階で「LINEで見積もりできます」と書いてあるかを見ておくと、後が楽になります。
ステップ5 それでも電話が来たとき
備考欄に書いても電話が来ることはあります。出られたときは、次の一言で切り上げてください。
ありがとうございます。今すぐ出られる状況ではないので、内容はメールでお送りいただけますか。こちらもメールでお返事いたします。メールアドレスはフォームに入力したものと同じです。
出られなかった着信に、無理に折り返す必要はありません。メールで「先ほどお電話をいただいたようですが、内容をメールでお送りいただけますでしょうか」と1通返せば十分です。これで用件はテキストに移ります。
ステップ6 契約後から当日までに電話が来やすい3つの場面
契約が決まったあとも、次の場面では電話が来やすくなります。事前にメールで先回りしておくと、ほぼ防げます。
- 引越しの前日確認 ── 「前日のご確認もメールでお願いします」と契約時に伝えておく
- 当日朝のトラック到着連絡 ── ここは電話が現実的です。「到着30分前にSMSをいただけますか」と依頼しておくと、電話の代わりになることがあります
- 新居到着後の追加確認 ── 当日は現場に自分がいるので、対面で済みます
4. テキストで進めるほうが、実は揉めない
電話を避けるのは我慢の産物ではありません。テキストで進めたほうが、引越しでは有利です。
標準引越運送約款第3条では、見積もりを行った事業者は、申込者の氏名・住所・電話番号をはじめとする9項目を記載した見積書を発行することとされています。この見積書をPDFやメールで受け取っておけば、当日に金額の話になったときの根拠になります。
また、荷物が増えた場合の追加料金の条件、解約手数料(約款第21条では前々日20%以内、前日30%以内、当日50%以内)といった、あとで効いてくる条件も、テキストで確認しておけば言った言わないになりません。電話が苦手な人が取りがちな行動は、契約実務としてはむしろ正しい。国民生活センターに寄せられる引越サービスの相談は2023年の2,128件から2025年には2,703件へ増えており、その中には見積もりと異なる追加請求も含まれています。
5. 業者側も、テキストのほうが助かっている
意外に思われるかもしれませんが、引越し会社にとっても電話は効率のいい手段ではありません。かけても出てもらえない、折り返しが来ない、聞いた荷物量を手で入力し直す必要がある。電話1本にかかる時間は、テキストのやりとりより長いことがほとんどです。
特に繁忙期は、営業担当が見積もりの訪問と架電に時間を取られ、社内で人が足りなくなります。テキストで先に情報が届いていれば、担当者は空いた時間に順番に処理できます。「メールでお願いします」は、業者にとっても悪い要望ではありません。遠慮せずに書いてください。
引越し会社の側でも、話さずに見積もれる仕組みが出てきています
大手のビデオ通話見積もりに加えて、最近はお客様が自分のスマートフォンで部屋を撮影し、そこから算出された荷物量と荷物リストが業者に届く方式も出てきました。私たちが開発しているUIROもそのひとつで、引越し会社の自社サイトにある「早速見積もりする」ボタンから、その場で撮影が始まります。通話も、日程調整も、訪問もありません。
深夜に思い立ったタイミングで見積もりの一次情報を渡せて、業者は翌朝それを見て返信できる。電話をかける側とかけられる側の、どちらにとっても無理がないやり方が、少しずつ増えています。依頼先を選ぶときは、公式サイトに「オンライン見積もり」「LINE見積もり」の導線があるかを見てみてください。
出典
- 株式会社ソフツー「電話業務実態調査」(562名、2023年8月4〜7日実施)電話に苦手意識を感じる人 全体57.8%/20〜30代72.7%
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000063.000028096.html - ソフトバンク株式会社 社内アンケート(215名、2024年3月7〜15日実施)連絡手段はメッセージ派が約90%/電話に苦手意識があるのは20代58%・30代49%・60代0%/苦手な理由の上位
https://www.softbank.jp/sbnews/entry/20240322_01 - 一括見積もりサイトの仕組み(入力した個人情報が複数の引越し業者に渡り、各社から連絡が来る構造/営業電話を受けない設定・業者選択機能)
https://hikkoshizamurai.jp/estimate/dangerous/ - 引越し見積もり後の営業電話への対処(備考欄でメール希望を伝える/電話番号入力が任意のサービスがある)
https://hikkoshi.suumo.jp/oyakudachi/8288.html - 見積もり取得社数の分布(n=100)1社20%/2社26%/3社28%/4社14%/5社10%/6社以上2%。ここから平均約2.7社、見積もり1件あたりの受注確率約36%を当社にて試算
https://www.0003.co.jp/estimate/column/detail1.html - 国土交通省による引越し時期分散の呼びかけ(3月の引越し件数は他の月の約2倍)
https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1380283.html - 標準引越運送約款(第3条 見積り/第21条 解約手数料・延期手数料)国土交通省告示・北陸信越運輸局掲載版
https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/content/000105059.pdf - 国民生活センター「引越サービス(各種相談の件数や傾向)」相談件数 2023年2,128件/2024年2,344件/2025年2,703件
https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/hikkoshi.html
※本記事中の「見積もり1件あたりの受注確率 約36%(3件に1件程度)」は、公開アンケートの見積もり取得社数の分布から当社が単純計算した試算値です。また、出典1・2の調査はいずれも実施から2〜3年が経過しています。
