一人暮らしの女性が引越しで一番怖いのは「訪問者が来たとき」── 36.4%という数字

一人暮らしをしている男女500人に「防犯面が怖いと感じる瞬間」を聞いた調査で、1位になったのは「訪問者が来たとき」で36.4%でした。2位の「帰宅・解錠の瞬間」31.8%を上回っています。
引越しの訪問見積もりは、まさにこの1位のど真ん中にあります。予定を合わせて、初対面の相手を自分の部屋に上げ、クローゼットの中まで見せる。これは防犯上、決して軽い行為ではありません。不安を感じるのは神経質だからではなく、状況が実際にそうだからです。

この記事では、調査の数字で現在地を確認したうえで、見積もり訪問が具体的にどういう行為なのかを分解し、実際に取られている4つの対策とその限界を整理します。最後に、訪問を受けると決めた日の準備をチェックリストにしました。


1. 数字で見る「訪問者への不安」

一人暮らしで怖い瞬間、1位は「訪問者が来たとき」36.4%

2026年2月に一人暮らしの男女500人(女性313人・男性187人)に行われた調査の結果です。

順位怖いと感じる瞬間割合
1位訪問者が来たとき36.4%
2位帰宅・解錠の瞬間31.8%
3位就寝中12.6%
4位外から音がしたとき9.4%

1位と2位で約7割を占めます。一人暮らしの防犯不安は、漠然とした「夜が怖い」ではなく、玄関のドアという1点に集中しているということです。

「昔より玄関を開けるのが怖くなった」57.1%

別の調査でも同じ傾向が出ています。首都圏の一戸建てに住む20〜69歳の男女800人に聞いた調査では、57.1%が「昔より玄関を開けて対応することが怖くなった」と回答。知らない相手の訪問を「面倒に感じる」が67.0%、「恐怖を感じる」が15.1%で、79.8%が非対面での対応を望むとしています。

さらに36.8%、およそ3人に1人が「ドアを開けさせようとするしつこい勧誘や不審な訪問」を実際に経験しています。不安は想像の産物ではなく、経験に裏打ちされています。

それでも引越しのときだけは、自分からドアを開けている

ここに引越しという行事の特殊さがあります。日常では居留守を使い、チェーンをかけたまま対応している人が、引越しのときだけは自分から日時を約束して、家の中まで通します。しかも相見積もりが常識とされているので、それを複数回やることになります。見積もり取得社数の調査(n=100)では1社20%/2社26%/3社28%/4社14%/5社10%/6社以上2%で、平均すると約2.7社。3社に頼めば、初対面の人を部屋に上げる回数も3回です。


2. 見積もり訪問は、具体的に何をする行為なのか

見せるのは玄関ではなく、部屋の奥

訪問見積もりの目的は荷物量の把握です。担当者が見たいのは、部屋の中でも最も見られたくない場所です。

玄関先で立ち話をして終わる作業ではありません。間取りのすべてと、収納の中身を見せるのが訪問見積もりです。担当者は同時に、廊下の幅、玄関ドアの寸法、トラックが着けられる位置も確認しています。

滞在時間は短いが、「短いから安全」ではない

訪問見積もりの所要時間は9割以上が20分以内という調査があり、作業自体は短時間です。ただし、防犯の観点で問題になるのは滞在時間ではありません。初対面の相手に、間取り、収納の中身、オートロックの有無、在宅している時間帯、そして引越し当日に部屋が空になる日付までが、まとめて伝わる点です。依頼した時点で氏名・現住所・新住所・電話番号も渡しており、断っても情報は相手の手元に残ります。

「来るのは男性である可能性が高い」のは偶然ではない

引越しの見積もりに来るのは、多くの場合、現場を知っている人です。荷物量を目測でき、当日の段取りが読め、その場で価格を決められる人でなければ見積もりになりません。

そしてトラック運送業に従事する女性は業界全体で約2割弱、ドライバーに限れば3%未満とされています。全産業の女性就業者比率が4割を超えるのと比べて極端に低い。「知らない男性が部屋に来る」という前提は、業界の人員構成から見てほぼその通りに起きます。

引越し会社が悪いという話ではありません。ただ、対策を考えるときに前提を美化しても仕方がないので、事実として置いておきます。


3. 実際に取られている4つの対策と、その限界

よく「対策」として挙げられるものを、限界とセットで検討します。どれも有効ですが、どれも完全ではありません。

対策① 友人や家族に同席してもらう

最も確実に効く方法です。第三者がいるという事実だけで、その場の緊張はかなり下がります。

限界は、日程調整のコストが跳ね上がることです。自分と業者の予定を合わせるだけでも面倒なところに、第三者の予定という3つ目の変数が入ります。しかも訪問見積もりは平日の日中に枠が集中しがちで、社会人の友人に頼むと土日しかありません。

相見積もりを取るなら、この調整を社数分やることになります。実際には「1社目は付き添ってもらったが、2社目からは一人で受けた」という形に落ち着きやすく、結果として不安な訪問が残ります。

対策② 玄関先で済ませてもらう

部屋に上げず、玄関先で荷物量を口頭申告する方法です。防犯面では確かに前進します。

限界は、その見積もりが「見積もり」として機能しなくなることです。担当者は収納の中身を見ていないので、荷物量はあなたの自己申告に依存します。そして荷物量の申告は、悪気がなくてもほぼ必ず少なめにズレます。押入れの奥、ベランダの物置、シンク下。人は自分の持ち物を過小に見積もるためです。

その結果として起きるのが、当日の追加請求です。標準引越運送約款では、申告と実際の荷物が異なると疑われる場合、事業者は荷送人の立ち会いのもとで荷物を点検でき、その費用は荷送人の負担とされています(第8条)。当日にこちらから解約すれば、見積運賃等の50%以内の解約手数料を請求されることもあります(第21条)。「玄関先で済ませる」は、防犯上の不安を金銭リスクに交換する選択です。国民生活センターに寄せられた引越サービスの相談も、2023年の2,128件から2025年は2,703件へ増えています。

対策③ 女性スタッフを指名する

レディースプランを用意している会社もあり、選択肢としては有効です。

限界は3つあります。ひとつ目は供給量で、前述のとおり業界の女性比率は低く、全社が対応できるわけではありません。ふたつ目は繁忙期です。3月の引越し件数は他の月の約2倍にのぼり、国土交通省が時期の分散を呼びかけているほど需要が集中します。この時期は「スタッフの性別を選ぶ」という条件そのものが通りにくくなります。

三つ目が見落とされがちです。「女性スタッフ対応」が当日の作業スタッフの話なのか、見積もりに来る営業担当の話なのかは、会社によって違います。指名するときは「見積もりに来る担当者も女性で」と明示的に確認してください。

対策④ 訪問なしの見積もりにする

電話、Webフォーム、写真送付、ビデオ通話といった方法です。人を家に入れないという目的は達成できます。

限界は2つ。ひとつは②と同じ、申告漏れによる精度の問題です。電話やWebフォームは結局「あなたの記憶で荷物を数える」方法なので、当日のズレが起きやすくなります。

ビデオ通話はこの問題をかなり解決します。大手のリモート見積もりでは、アプリのインストールは不要で、送られてきたURLをタップするとブラウザでつながり、20〜30分ほどで訪問時と同等の見積書が作れるとされています。担当者が画面越しに収納の中まで確認できるぶん、精度は電話やフォームより上がります。

ただし、結局その時間、担当者と一対一で会話しなければなりません。日程を合わせる手間は訪問と変わらず、部屋の様子を映して見せることに抵抗を感じる人もいます。加えて、複数社にまとめて依頼する形を取ると入力した連絡先が同時に各社へ渡り、訪問は避けられても電話への対応が発生します。


4. それでも訪問を受けると決めたなら

荷物が多い、大型家具がある。訪問見積もりのほうが合理的なケースは確かにあります。

訪問前と当日のチェックリスト

その場で契約しない

訪問の現場では「今この場で決めてくれればこの金額」という提示が行われることがあります。その場で決めなければ消える価格を前提に判断する必要はありません。「他社が出そろってから連絡します」で十分です。見積書は必ず書面かPDFで受け取ること。口頭の金額しか出さない会社は、後で揉めます。


5. 本当に必要なのは「部屋を見せずに荷物量を伝える」手段

4つの対策の限界は、同じ1点に集約されます。荷物量という情報を、人が現地に立たずに正確に渡す方法がなかったことです。訪問を断れば精度が落ちて当日の追加請求リスクを負い、精度を取れば人を家に入れる。この二択になっているのは、荷物量の把握が「人の目測」に依存してきたからです。逆に言えば、荷物量が数値で渡せるなら、訪問するかどうかは自分で選べます。

そして、それは引越し会社にとっても悪い話ではありません。平均2.7社の相見積もりを前提にすると、訪問1件が受注になるのは3件に1件程度という計算になります(※当社試算)。残りは、人と車を使って売上にならない訪問です。訪問されたくないお客様を無理に訪問して失注するより、先に荷物量を受け取れたほうが業者側の負担も減ります。


引越し会社の側でも、非対面で見積もる仕組みが出てきています

大手のビデオ通話見積もりに加えて、最近はお客様が自分のスマートフォンで部屋をスキャンし、そこから荷物量を算出して業者に渡すという方式も出てきています。私たちが開発しているUIROもそのひとつで、引越し会社の自社サイトにある「早速見積もりする」ボタンから、お客様がその場で自分の端末で部屋を撮影します。LiDAR搭載モデルは不要です。

この形なら、人を家に入れる必要も、日程を合わせる必要も、通話する必要もありません。お客様の安心と業者の効率が同じ方向を向くという点で、引越しの見積もりは珍しい工程です。

依頼先を選ぶときは、「訪問なしで見積もれるか」「その場合の荷物量はどう伝えるのか」を先に聞いてみてください。答えられる会社は、その運用をすでに持っています。


出典

  1. 株式会社AlbaLink「一人暮らしで防犯面が怖い瞬間ランキング」(一人暮らしの男女500人/女性313人・男性187人、2026年2月3〜9日調査)1位「訪問者が来たとき」36.4%
    https://www.mapion.co.jp/news/release/000000335.000055654-all/
  2. パナソニック株式会社 自宅来訪者に関する意識調査(首都圏の一戸建て居住者20〜69歳男女800人、2026年4月28日〜5月1日調査)「昔より玄関を開けて対応することが怖くなった」57.1%、非対面での対応を望む79.8%
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001205.000024101.html
  3. 見積もり取得社数の分布(n=100)1社20%/2社26%/3社28%/4社14%/5社10%/6社以上2%。ここから平均約2.7社、訪問1件あたりの受注確率約36%を当社にて試算
    https://www.0003.co.jp/estimate/column/detail1.html
  4. 訪問見積もりの所要時間は9割以上が20分以内
    https://hikkoshizamurai.jp/estimate/required-time/
  5. トラック運送業における女性比率(業界全体で約2割弱、ドライバーは3%未満/全産業の女性就業者比率は4割超)。全日本トラック協会「若年層・女性ドライバー就労育成・定着化に関するガイドライン」をもとにした解説
    https://store.truckland.jp/mag/archives/8242
  6. 標準引越運送約款(第3条 見積り/第8条 荷物の点検/第21条 解約手数料)国土交通省告示・北陸信越運輸局掲載版
    https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/content/000105059.pdf
  7. 国民生活センター「引越サービス(各種相談の件数や傾向)」相談件数 2023年2,128件/2024年2,344件/2025年2,703件
    https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/hikkoshi.html
  8. 日本通運「オンライン・リモート見積もり(リモミ)」所要時間20〜30分、アプリ不要でURLからブラウザ接続
    https://www.nipponexpress.com/jp/ja/site/hikkoshi/remote
  9. 国土交通省による引越し時期分散の呼びかけ(3月の引越し件数は他の月の約2倍)
    https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/1380283.html

※本記事中の「訪問1件あたりの受注確率 約36%(3件に1件程度)」は、公開アンケートの見積もり取得社数の分布から当社が単純計算した試算値です。